数年前から女性や子どもたちにも人気のボルダリング。失礼ながら、まさか視覚障害のある人たちも楽しんでいるスポーツだとは、知りませんでした。
「見えない壁だって、越えられる。」をコンセプトに、フリークライミングを通じて、視覚障害者をはじめとする人々の可能性を大きく広げることを目的とし、活動しているNPO法人モンキーマジック。
国内外で障害者向けのクライミングスクールを運営したり、障害のあるなしは関係なく誰でも参加できる交流型のクライミングイベントを企画運営したりしている団体です。
記者
クライミングが好きだから
16歳の時にクライミングに出会い、30年以上クライミングを継続しているという小林さんは、自他ともに認めるクライミング好き。人生の途中で視覚障害者となったそうです。
パラクライミング世界選手権大会では優勝実績もあり、2018年、50歳を迎えられるそうですが、9月にオーストリア・インスブルックにて開催されるスポーツクライミング世界選手権 ( International Federation Sports Climbing主催 )と併催される、パラクライミング世界選手権の、視覚障害カテゴリー男子B1クラス日本代表に内定されています。
このB1クラスでは、2014年と2016年に優勝している小林さん。3連覇に向けて挑戦し続けているのですね。
そんな小林さんだからこそ、「障害がなくても、あっても、どちらの立場でもクライミングを楽しめる」ということに気付いたそうです。
そして、2005年からNPO法人モンキーマジックとして、様々な取り組みを行っている「視覚障害クライミングのパイオニア」です。
クライミングには、身体面だけではなく心理面においても自信を得たり、可能性を広げる特徴があります。障害者がこのスポーツに取り組むことにより、障害者の生涯スポーツとしての運動機会拡大、さらには自立支援や社会参画等、QOLの向上に繋がります。
また、クライミングは障害に関係なく、同じ場所で同じルールで楽しめる特性もあり、健常者と障害者が「助ける・助けられる」の関係ではなく、同じクライミング仲間として関わり、互いに壁を取り払い、理解しあう価値ある機会となります。NPO法人モンキーマジック ウェブサイトより
では、誰でも参加できる、という交流イベントについて見てみましょう。
マンデーマジック
障害があってもなくても参加することができます。
クライミングを愛好する障害者が、スクール以外の場所で気軽にクライミングを楽しむためには、晴眼者や健常のクライミング仲間が不可欠であり、クライミングに親しむ人をすみ分けることなく、共に楽しむ仲間との出会いの場作りとして始まったそうです。
会場は、東京の高田馬場にあるエナジークライミングジム高田馬場店。月曜日は定休日で、お店の協力により貸切での開催となっているそうです。
また、2017年からは毎月第3月曜に『マンデーマジック横浜』もスタートしており、毎月1回の土曜日には『サタデーマジックつくば』も開催されています。
視覚障害者とのクライミングについて、代表の小林さんも出演されている、とても分かりやすい動画がアップされていますのでご紹介します。
クライミングについてだけでなく、駅で待ち合わせをして一緒にお店へ行くところから、街で視覚障害者と会ったときにどうしたら良いか、も分かる動画となっています。
各種イベントへの参加は、事前の申し込みが必要です。詳細をよくご覧の上、ぜひご参加ください。
https://www.monkeymagic.or.jp/join
そして先日、モンキーマジックがケニアの視覚障害の子どもたちを対象にしたプログラム「No Sight But Onsight ~クライミングをケニアの視覚障害のある子どもたちに~」が、スポーツ庁長官より感謝状を授与されたそうです。
どういったプログラムなのでしょうか。
生まれて初めてのクライミング
東アフリカに位置するケニアでは、「35歳未満が人口の65%を占めるという人口構造がそのまま障害者の数にも比例している一方、学校教育を受けられている視覚障害児は20%程度に留まっている」そうです。
現地の盲学校では、学習する機会以上に余暇活動(レクリエーション)の機会そのものが少ないという実情もあるようで、障害者クライミング自体、ヨーロッパやアメリカに比べると、アジア・アフリカ地域ではまだまだ未開拓だといいます。
東アフリカ諸国では唯一、ケニアの首都ナイロビにクライミング施設「Blue sky」があり、そこで今回は75名の視覚障害児が、生まれて初めてのクライミングを体験。
プロジェクトを終えて、「学齢の高い子どもほど、その高い身体能力からクライミングが初めてとは思えないほどの反応を示し、また誰も教えていないはずの動きやテクニックを繰り出す点」に驚かされたそうです。
記者
このプロジェクトの様子も、動画がアップされています。
今後も、プログラムを提供するために現地や他の地域にもスタッフを派遣したり、クライミングジムへ視覚障害者へのクライミング指導法の伝授を継続的に行っていけるように事業・規模を拡大していきたい、というモンキーマジック。
日本国内にとどまらない活動は、代表の小林さんが世界選手権などで活躍されている背景もあることと思います。
まとめ
街で時々ボルダリングジムを見かけたり、商業施設などでも子どもたちが楽しんでいるところを見ることがあります。わたし自身も挑戦したことはありませんが、あのとてもカラフルな壁? が気になっている方や、運動に良さそう、と思っている人は多いのではないでしょうか。
その壁が見えても見えなくても、世界中どこでも、皆で協力して越えていける社会。ゴールに手が触れたときの喜びや達成感を、誰もが感じることができる社会。スイスイと登れる壁ばかりではないけれど、きっと越えられるはずです。