被災した小学生に「天使のはねランドセル」を。その歴史と取り組み。

天使のはねランドセル

「天使のはねランドセル」で知られるランドセルメーカーの株式会社セイバン。西日本を中心に発生した平成30年7月の豪雨により、ランドセルが使えなくなった小学生を対象に、「天使のはねランドセル」寄付の受付を開始しました。

株式会社セイバンの本社は、兵庫県たつの市。創業1919年(大正8年)と、とても歴史のある会社です。そして3つの工場が兵庫県内にあります(室津工場、波賀工場、姫路工場)。今回の被災地支援を決定した理由は、このように書かれています。

当社は今回の豪雨で被害を受けた兵庫県に本社と3つの工場を置く企業として、また「お子さまとそのご家族の笑顔にあふれた生活に貢献する」という経営理念を掲げている企業として、何ができるかを考え、微力ながら今回の支援を決定いたしました。
株式会社セイバン プレスリリースより

ランドセルを背負って、学校へと駆け出して行く子どもたちの姿は、平和の象徴のような光景だと思います。被災した子どもたちやその家族が、1日でもはやく、それまでと同じような日常生活に戻れると良いですね。

ランドセルの歴史

株式会社セイバン
日本で子ども時代を過ごした人であれば、ランドセルがどういうものか、写真などを見なくても分かる人がほとんどだと思います。

しかし、海外では、ランドセル=通学かばんではありません。そもそもランドセルは英語ではなく、和製英語。オランダ語の「ランセル」が語源となっています。

ランドセルの歴史は、株式会社セイバンのウェブサイトにとても分かりやすいページがあります。(以下はこのページを参照しています)

オランダ語の「ランセル」とは、布製の「背(はい)のう」 = リュックサックのこと。江戸時代末期に、日本に西洋式の軍隊制度が導入されたとき、軍用としてリュックサックも同時に輸入され、使われ始めたそうです。

そして明治10年に学習院が開校。明治18年に生徒が馬車や車、人力車で通学することを禁止します。この時に、軍用の「背のう」つまり「ランドセル」に学用品類をつめて、徒歩で通学させることが決まりました。これが、ランドセルが子どもの通学カバンとして使われ始めたきっかけです。

しかし当時のランドセルは布製で、現在のような皮革製のものが登場したのは、明治20年のことだそうです。大正天皇が学習院に入学したお祝いに、当時の内閣総理大臣、伊藤博文が皮革製の箱型のランドセルを特注し、献上したことがきっかけなんだとか。こういった流れから、現在の一般的なランドセルは「学習院型ランドセル」とも呼ばれているそうです。

ランドセルは、子どもたちの負担を軽減でき、両手も使えて便利なため、小学生の通学カバンとして都市を中心に普及し始めます。しかし、戦前から戦後まもなくの頃は、地方ではまだまだ、学用品を風呂敷に包み、それを手に持って通学するのが一般的でした。

昭和30年代以降、全国的にランドセル通学が普及していきます。素材は天然皮革だけでなく、合成皮革も使用されるようになり、色や大きさなども、流行や時代に合わせて変化していったそうです。

日本のアニメにも当たり前のように登場するランドセル。海外の日本アニメファンなど一部では日本のランドセルがオシャレだと、人気になっているとか。日本独自の通学カバン「ランドセル」。世界に誇る日本の文化の1つなのですね。

セイバンのランドセル

株式会社セイバン
さて、「天使のはねランドセル」を作っている株式会社セイバンですが、創業は、1919年(大正8年)。兵庫県たつの市御津町出身の泉亀吉が、大阪で開業した泉亀吉商店がはじまりだそうです。

当時は、播磨産の皮革を材料に、御津町室津の漁師らが冬場に作った財布やカバン、キセル入れなどを販売していたそうです。

第二次世界大戦の終戦翌年の1946年、その室津にランドセル製造工場を設立(現室津工場)。1950年代後半から都市部の小学生を中心にランドセルが普及し始め生産量が増加し、今日では当社のすべてがランドセルに関わる製品の製造・販売となっています。株式会社セイバン ウェブサイトより

セイバンのランドセルは、すべて日本の工場で作られているそうです。多くのモノが海外の大規模工場で、効率的に、低コストで生産されているそうですが、メイド・イン・ジャパンにこだわり、日本の職人たちによる匠の技が国内生産を支えているのですね。

子どもたちが6年間、使い続けなくてはならないランドセル。耐久性は欠かせない要素の一つです。

セイバンのランドセルには約250個ものパーツが必要だそうです。そして、それらを1つ1つを組み合わせていくランドセル作りには、熟練した職人たちの技術をつないでいくチームワークが必要です。

セイバンの工場には、ランドセル作り50年のベテランから駆け出しの新人まで、幅広い世代の職人が活躍中。ベテランは培ってきた技術を若手に伝え、若手はベテランが想像できなかった新しいアイディアを生み出す、という職人の技術を次世代につないでいくための仕組みが出来上がっているのですね。

セイバンの工場に入ってきた新人スタッフは、ランドセル作りのほとんどすべての工程を経験するそうですが、新人のころは、製品として出せるレベルのものはなかなか作れないそうです。

セイバンが子どもたちに届けたい「背負いやすくからだに負担がかかりにくいランドセル」を安定した品質で作るには、日本の職人が持つ「細部までこだわる根気」と、長年培われた「ものづくりの技」がなければ対応しきれないのです。株式会社セイバン ウェブサイトより

きちんと次世代へと受け継いでいけるような体制作りをしているところが、凄いですね。

ランドセルは高い…?

こうして素晴らしい技術を持った職人さんたちの手によって生産されているランドセル。同じ品質のものがより安価に、大量に作れる海外のオートメーション工場で作ったものと、値段が違ってくるのは当然のことと言えます。

ランドセルに限らず、きちんと手で作られたものは、職人さんたちの技術と手に対する対価が必要ですし、きちんとしたモノを買いたい、という人にとってそれは当然の御礼であるだろうと思います。

しかし、昨今では給食のなくなる夏休みが明けると体重が減ってしまっている子たち、家庭の経済的理由により修学旅行に行けない子たちなど、いわゆる「貧困家庭」が増えてきているといいます。

ランドセルは、どんなに安くても3万円程度。国内生産の「天使のはねランドセル」は、大体5万円〜6万円程度です。もっと高級なランドセルもあります。

文部科学省が発表している「子供の学習費調査(平成28年度)」によると、公立の小学校で1年間にかかる学校教育費用は60,043円、給食費が44,441円、学校外活動費が217,826円で、トータル322,310円かかるとされています。

しかしランドセルの購入は義務ではないようで、ランドセルを持っていなくても小学校には入学できます。

が、多くの子どもたちがランドセルを背負っているなか、自分だけランドセルがない…という思いを子どもにさせたくない、という親御さんは多いようです。

そういった家庭のために、自治体によってランドセルを無償提供しているところ、ランドセルではなく、登山などでも動きやすいランリュック(重量が軽く、価格も1万円以下)を指定しているところもあるようです。

また就学援助のひとつとして、「要保護児童生徒援助費補助金」という国の補助金制度があります。
詳しくはこちら http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/017.htm にありますが、どうやったら援助を受けられるのかは、住んでいる地域の区役所などに相談してみるのが良さそうです。

ランドセルでできること

小学校を卒業すると、その役目を終えるランドセルですが、6年間使用したランドセルをアフガニスタンに贈る「ランドセルは海を越えて」キャンペーンがあります。2004年からスタートしており、すでに11万個以上のランドセルが海を渡ったようです。

今年の募集はもう終わっているようですが、使わなくなったランドセルがどこかで眠っている人!
詳しくはこちらです http://www.omoide-randoseru.com/home.html

そして、「天使のはねランドセル」の株式会社セイバンでは、今回実施される平成30年7月豪雨の被災地支援としての寄付の他にも様々な取り組みが行われています。

被災地支援としては、今回の西日本を中心とした豪雨がはじめてではありません。東日本大震災で被災した小学生に対し、義援金とは別に、ランドセル計1万個を寄付しています。

「新しいランドセルで元気を出してほしい」という想いを伝えたいと、全従業員が一つひとつにメッセージを書いて貼り、現地へ送り届けたそうです。

また、阪神大震災の際にもランドセルを寄付しています。

他にも、安全でやさしい素材を使ったエコロジカルランドセルであることや、異染性白質ジストロフィー患者家族の会に寄付による難病と闘う子どもたちへの支援、年間1400件近くも起きている水難事故に備えるための着衣泳教室へのランドセル寄贈など、ランドセルを使う子どもたちとその家族のことを考えた様々な取り組みが行われています。

また、2013年度からは公益財団法人 全国里親会を通じて、里親家庭の新1年生の子どもたちにランドセルを寄贈。2017年度までに約600人の子どもたちに天使のはねランドセルが贈られたそうです。

「天使のはねランドセル」を購入することは、こういった素晴らしい取り組みをしている会社を応援することになるのですね。

平成30年7月豪雨の被災地支援としての寄付について

■応募方法
 平成30年7月豪雨により、ランドセルが使用できなくなった小学生のお子さまで、『天使のはねランドセル』の寄付を希望される方は、下記URL先のランドセル申し込み用紙にご記入いただき、市町村が発行する「被災証明書」と共にメールでご連絡ください。
※「被災証明書」のご提出がない場合は、対応いたしかねます。あらかじめご了承いただきますよう、お願い申しあげます。

▼寄付についての詳細はこちらをご覧ください。
https://www.seiban.co.jp/news/detail/180713.html

■ランドセル申し込み用紙お送り先・お問い合わせ先
株式会社セイバン 平成30年7月豪雨被災地支援担当者 宛
E-mail:donation@seiban.co.jp
※お申し込みやお問い合わせはメールでのみ受け付けております。

■応募期間
2018年7月13日(金)~ 2018年12月31日(月)

*記事中の写真は、株式会社セイバンのプレスリリースに含まれていたものを使用しております。